東京高等裁判所 昭和33年(う)1997号 判決
被告人 押元一雄
〔抄 録〕
記録をみるに、原審公判廷において原審弁護人から本件窃盗は中止未遂であるとの主張がなされたことは明らかであり、そして中止未遂の主張は判決において判断を示すべき事項であるにも拘らず、原判決は右主張に対する判断を遺脱していることも所論のとおりである。
しかしながら、記録によれば、本件は被告人が金品窃取の目的で他人のズボンのポケツト内を物色したが金品が見当らなかつたため未遂に終つたものであり、自己の意思により止めた中止未遂に該当しないものであることは疑の存しないところであるから(尤も、原判決は他の浴客に発見せられ窃盗の目的を遂げなかつたと認定しており、この限りにおいては事実の誤認があるが、しかし、金品が見当らなかつたため未遂になつた場合と他人に発見せられたため未遂になつた場合とは、等しく所謂障碍未遂に該当するから、右の誤認は判決に影響を及ぼすものとはいえないこと勿論である)原判決が中止未遂の主張に対する判断を示さなかつたことは違法であるけれども、右違法は結局は判決に影響がなかつたことに帰し、また原判決は中止未遂と認定しなかつたのであるから、刑法第四十三条但書を適用して刑を減軽または免除しなかつたことももとより当然であり、論旨はいずれも理由がない。
(大塚 渡辺辰 関)
注 本件破棄は量刑不当